レガシーシステムのリプレイスの流れは？方法・費用・成功のコツ

レガシーシステムのリプレイスとは？わかりやすく解説

レガシーシステムってなに？今のシステムにある問題

レガシーシステムとは、COBOL や AS/400 といった古い技術基盤に縛られ、ひとつの修正でさえ影響調査に丸一週間、本番適用にさらに数日かかる基幹系を指します。OS や DB はサポートが切れ、パッチ適用のたびに数百万円の追加費用が発生しがちです。リアルタイム連携も難しく、売上や在庫の更新が翌日にずれ込み、経営判断を鈍らせる――これが現場の困りごととして表面化します。

なぜ入れかえが必要になるのか？よくある理由

企業がリプレイスに踏み切る典型的な理由は三つあります。第一にサポート終了通知によるセキュリティリスク、第二に保守契約が年率二割で高騰し IT 予算を圧迫すること、第三に担当技術者の高齢化で障害復旧が遅れるという人材リスクです。いずれも取引先監査や保険料率に影響するため「早めに手を打たないとステークホルダーに迷惑がかかる」と経営層が背中を押される形になります。

リプレイスのやり方と考え方

主な方法のちがい（作り直し・入れかえ・のせかえ）

作り直しはゼロからスクラッチ開発し、ビジネスロジックを最適化して拡張性を確保する手法です。入れかえは会計や販売管理などを SaaS／パッケージで標準化し、導入を数か月で終わらせるアプローチ。のせかえはいわゆるリホストで、コードにほぼ触れずクラウド VM へ移すだけなので最短一か月でデータセンターを閉鎖できます。コストと期間はのせかえ＜入れかえ＜作り直しという順で増加するイメージです。

自社に合う方法を選ぶポイント

選択軸は「独自業務の割合」と「投資回収期間」です。業務を業界標準に合わせられるなら入れかえを選び、短期間で ROI を得るとよいでしょう。自社独自のロジックが競争力そのものなら、長期視点で作り直しを選択し拡張性を確保するのが王道です。のせかえは保守期限をしのぐ“時間稼ぎ”として有効ですが、将来の追加投資も見据えて検討すると失敗が減ります。

リプレイスの進め方とステップ

はじめにやるべき準備と見直し

第一歩は業務フローを BPMN で描き、利用機能とデータを漏れなく棚卸すことです。次に保守費、障害損失、機会損失を数値化し、刷新後に得られる削減効果を示して経営陣と KGI を握ります。この準備フェーズを疎かにすると要件が二転三転し、スケジュールが雪だるま式に延びるので要注意です。

パートナーえらびとおためし開発（PoC）

候補ベンダーには二週間程度の PoC を必ず依頼し、実データを用いてマスタ登録や帳票出力を動かします。性能や操作感を自部署の担当者が体験することで、提案書では見えないギャップを早期に発見できます。PoC で課題が顕在化したベンダーは早めに候補から外すほうが、後戻りコストを抑えられます。

開発・引きつぎ・運用までの流れ

設計が固まったら GitLab CI/CD を構築し、自動ビルドと静的解析をパイプラインに組み込みます。ステージング環境で業務部門がシナリオテストを行い、ブルーグリーン方式で徐々に本番トラフィックを新環境へ切り替えます。移行完了後はナレッジ共有会を開き、運用マニュアルを一週間以内に最新版へ更新すると現場が混乱しません。

リプレイスをうまく進めるコツ

社内の合意づくりと役割分担

プロジェクト開始時に経営層・業務責任者・情シスでステアリングコミッティを置き、要件変更や予算承認は月次で議論します。権限と担当範囲を文書化し、エスカレーション経路を一枚図で全社員へ展開すれば「誰に相談すればいい？」という迷いを排除できます。

予算とスケジュールの決め方

機能を WBS に展開し、ベンダー見積もりと自社工数を分離して積み上げます。想定外変更に備えて全体の 15％ をリスクバッファに設定し、四半期ごとに実績差異をレビューする仕掛けを用意すると、予算超過を初期段階で是正できます。

相談すべき相手の見きわめ方

業界テンプレートを持つベンダーは短期導入に強く、グローバル SI は複数拠点統合や大規模移行の実績が豊富です。自社が求めるのが業務標準化か統合アーキテクチャかを明確にし、その実績事例を持つ会社を優先して面談すると、ミスマッチを防げます。

まとめ

リプレイスは「作り直し」「入れかえ」「のせかえ」の三つから自社の制約と目的に合う手法を選び、棚卸→PoC→段階移行という順序で進めることで混乱を最小化できます。数値化した指標を全関係者と共有し、定期レビューで軌道修正を続ければ、予定通りのコストと期間で移行完了を実現しやすくなります。