基幹システムのモダナイゼーションとは?手法・課題・成功のコツを解説

基幹システムのモダナイゼーションとは?意味と目的を整理

モダナイゼーションは既存システムを最新技術で再生する取り組み

モダナイゼーションとは、稼働歴が長い基幹システムをクラウド、マイクロサービス、DevOps などの最新アーキテクチャへ置き換え、開発スピード・保守性・セキュリティを根本から引き上げる経営施策です。単なるハード更新やパッケージ導入ではなく、業務プロセスやデータモデルまで再設計し、IT を企業成長のエンジンへ転換する点に本質があります。

クラウド時代に取り残されるリスクが急拡大している

市場は API 連携とデータ利活用が前提の時代に突入しました。オンプレのレガシー環境では新規サービス連携が難しく、技術者も高齢化。保守費用は年率二桁で膨張し、機会損失が加速度的に増えます。だからこそ、今モダナイゼーションに舵を切る企業が増えているのです。

モダナイゼーションが必要なシステムの特徴

保守コストが年々増え続け収支を圧迫している

ハード維持料、延長サポート契約、レガシー言語の高単価エンジニア――維持費は毎年右肩上がりに増加します。「改修ゼロでもコストが増える」構造が攻めの投資を削ぎ、経営判断のスピードを奪います。

拡張や連携が難しいモノリシック構造になっている

機能間が密結合し、外部とのデータ受け渡しは CSV のバッチ連携のみ。小さな機能追加でも全機能テストが必要となり、開発リードタイムが数か月単位で伸びる――その間に市場は先へ進んでしまいます。

担当者が減り技術継承が不可能に近づいている

COBOL、RPG、VB6 … 新規技術者がほぼ現れない言語に依存していると、障害復旧は「担当者の記憶頼み」。人的リスクが可視化された瞬間に、顧客との取引条件すら揺らぎかねません。

代表的なモダナイゼーション手法と選び方

クラウド移行・リファクタリング・再構築は目的が異なる

クラウド移行はソースを最小変更で IaaS/PaaS へ載せる短期コスト削減策です。リファクタリングは機能を保ちながら内部構造を整理し、自動テストと CI/CD による継続的デリバリーを実現します。再構築は業務・データをゼロベースで再設計し、マイクロサービスやイベント駆動に転換する抜本策――選択のカギは「いつまでに」「何を」変えたいかです。

タダノ:VB.NET 依存を脱し開発生産性を倍増

課題:200 超の業務アプリが VB.NET/.NET Framework に依存し、サポート終了と技術者不足が顕著でした。
施策:ULSコンサルティングが Java+Spring/TypeScript へ全面移行し、3段階の基盤刷新とペアプロ教育で自社エンジニアをリスキリング。
成果:PoC で自走開発を確認後、リードタイムが半減し品質も向上。開発者のモチベーションが復活し、継続的改善の文化が定着しました。

参照元:ULSコンサルティング公式HP(https://www.ulsconsulting.co.jp/news/press/2024-11-14.html)

村田製作所:メインフレーム PL/I から Java へ全面オープン化

課題:海外売上比率 90% の事業を支えるメインフレームが災害リスクと情報伝達スピードのボトルネックでした。
施策:コベルコシステムなど3社が4年で基幹を再構築し、言語を PL/I から Java、基盤をメインフレームからオープンサーバへ移行。
成果:月次処理が1日から数時間に短縮され、災害リカバリも強化。全社レポーティングがリアルタイム化し意思決定速度が向上しました。

参照元:コベルコシステム公式HP(https://www.kobelcosys.co.jp/casestudies/detail/130612/)

横河レンタ・リース:Notes 廃止とハイブリッド連携基盤を4か月で構築

課題:IBM Notes で動く周辺業務がクラウドと連携できず、二重入力と手作業が常態化していました。
施策:HULFT の DataSpider Servista と Thunderbus でオンプレ基幹と kintone/クラウドをセキュア接続し、4か月でデータ連携基盤を刷新。
成果:大量データの安定処理と手作業排除を同時に達成。見積・配送・保守情報がリアルタイム連携され、業務効率と顧客対応スピードが大幅に向上しました。

参照元:HULFT公式HP(https://www.hulft.com/casestudies/case-32)

自社課題と将来像を擦り合わせ最適手法を選ぶ

短期コスト圧縮が最優先ならクラウド移行、俊敏性と品質の両立ならリファクタリング、差別化ロジックを武器にしたいなら再構築が合理的です。事業戦略・投資回収期間・IT 内製化方針の3軸で比較すればブレません。

モダナイゼーションを進めるステップ

現状把握と目的を最初にクリアにする

サーバ台数、保守費、障害件数を棚卸し、KPI として「開発サイクル半減」「インフラ費 30% 削減」など定量ゴールを設定します。指標が具体化すれば、関係者の合意も得やすくなります。

要件整理と優先順位づけで迷走を防ぐ

ビジネス要件と非機能要件を洗い出し、緊急度と投資効果で ABC に分類。まずは ROI が高い領域から着手し、小さな成功を積み重ねながらスコープを拡大します。

パートナー企業を選定し役割分担を明確にする

内製チームは業務仕様と品質定義を握り、外部パートナーはモダン技術の実装と教育を担当する「共創型」がベスト。SLA とスキルトランスファー範囲を契約段階で明文化しましょう。

相談先を選ぶときのチェックポイント

業種と業務プロセスを深く理解している

製造・流通・金融など、業界特有の会計処理や法規制を知るパートナーは Fit&Gap 精度が高く、手戻りが激減します。成功事例のヒアリングで業界理解を確認しましょう。

成功実績と提案力で具体解を示せる

同規模・同業種案件の実績を持つ企業は課題を先読みし、PoC 提案も具体的です。費用対効果シミュレーションを依頼して比較すると真の実力が見えます。

導入後も伴走する支援体制がある

モダナイゼーションはリリース後こそ改善の連続です。監視・運用・内製化支援を長期でコミットできる体制があるかを、SLA やエンジニアリソースで確認すると失敗を防げます。

まとめ

モダナイゼーションは、クラウド移行・リファクタリング・再構築を組み合わせ、保守費削減とビジネス変革を同時に実現する施策です。事例に学びながら現状を定量化し、信頼できるパートナーと共に段階的に進めれば、基幹システムは企業成長を後押しする強力な基盤へ生まれ変わります。

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